がんばれないひと。

統合失調症歴10年。35歳男の雑記です。地元のフリーペーパーの記者をやっています。

久しぶりにじっくり小説を読んだ。

宮本輝『胸の香り』。すごい良かったです。

 

僕を形成した春樹、龍、三島以外にこんなに惹かれる作家がいたのかと感動しちゃいましたね。

 

もちろん『泥の河』くらいは知っていたのですが、なんか陰気が陰気を誘っているなぁくらいの感想しか当時の僕にはありませんでした。

 

でも。なんでしょう。歳を重ねるに連れて好きな作家も変わっていくのかもしれません。

 

龍、春樹、三島は若い人にも人気があります。むしろ若い人こそ、のめり込んで読むような文学かもしれません。

 

『胸の香り』は、面白いという感じではありません。

 

ただ、印象に残る。

 

僕はユーモアを龍、春樹、三島から学んだつもりだったんですが、

 

それはまだ僕が若かったからかもしれませんね。

 

こうやって人を笑わせるんだ、こういうセンスが一流なんだ、というのを知らなかったから、惹かれたのかもしれませんね。

 

でも歳をとるとユーモアがどうでもいい心境がわかります。

 

笑わすとかおかしいとかより、

 

大事なことがあることがわかります。

 

ちょうどそういう感覚に気づいたときに『胸の香り』に出会いました。

 

この小説は、心の琴線ばかりを捉えた短編集です。

 

泣かせようとしているわけではありません。

 

例えていうと、

 

いいものを心に持っている不良の高校生が、彼が唯一慕う教師に、何か言われて、それ以来、不良の彼の態度が変わった、みたいな少年漫画によくあるようなエピソード。その何か言われたことの言葉こそ、

 

この小説です。

 

久しぶりに小説で余韻に浸りました。

 

映画で浸ることはままあるんですが、小説は久しぶりです。一年ぶりくらいかもしれません。

 

僕はこの小説を読んで確信したんですね。

 

合理の世の中についていけないやつは馬鹿だという人間に

 

与しない理由。

 

それは例えばこの『胸の香り』のような小説を読んで、心打たれることだ、と。

 

僕は小説で満足してしまう人生に危機感を覚えるような人間ですが、

 

それでも響く小説は響くんですね。

 

その再認識がこれから僕にどう影響を与えるかなんだかワクワクしたような読後感でした。

 

そうです。

 

金がない金がない言ってないで、

 

もっとこういう小説を読め、

 

と神様に諭されたような感じです。

 

本当にお金と幸福はリンクしませんね。

 

ただ、僕は、この小説を読んで、

 

幸せだったんです。

 

僕が考える最高の"いいこと"です。