がんばれないひと。

統合失調症歴9年。34歳男の雑記です。統合失調症の能力を示すのが目的です。

「創作活動している気難しい父親なんて息子のおれからしてみれば迷惑千万でしかなかった」

『騎士団長殺し』をゆっくりゆっくり文章を味わうかのように読み進めているのですが、

 

どうしたらこうも印象的なフレーズを適した位置に、なんの不自然さもなく埋めこめるのだろうという文章がたくさん出てきます。

 

だから村上春樹の作品は、速読なんて容易にはできないんです。

したい人はすればいいと思うのですが、ストーリーを把握するだけとかそういった主旨には作品が向かないんですね。

 

作品の方からそういった読み方を否定してくるような感じです。

 

で、まだ第一巻の半分くらいのところまでしか読んでいないのですが、文章の消化に時間がかかっています。

 

いかに新書とか新聞とかその類が、速読向きのものが多いかがわかります。

 

僕は普段、別に自慢でもないですが本を読むスピードは速い方です。でもああここ速読すると見落とす何かがあるなあという箇所が出たら、注意して読むようにしているんですが、『騎士団長殺し』はそういう箇所のオンパレードです。

 

で、タイトルにあげたセリフを言う人物が出てくるんですが(一言一句までは一緒じゃないかもしれません)、心にひっかかっています。

 

というのも創作、文章に限らずなにかしらの作家が、なにかしらのものを生み出す行為って、そういえば無意識のうちに社会全体のコンセンサスとして尊いもの、みたいなイメージがあるのは事実だなあと。

 

これは実に不思議なことなんですが、ずっと創作とは無縁の仕事一筋で今、晩年を迎えようとしているような老人から、「創作なんてこれっぽちも価値がないぞ」みたいなふうに言われて単純に、その通りだ!と思う人は馬鹿でしょう。

 

でも、『騎士団長殺し』のような作品中にポッとそういったセリフが出てくると、ああそういえばそうだなあ、と創作も往々にして誰かに迷惑かけてやっているものだしなあ、とかいろいろ考えますよね。

 

おそらく優れた作家さんほど、ほんとうに優れた作家さんほど、”ほんとに”そう思っているんじゃないかと思う、というのが僕の推測なんですが、

 

また逆のパターンでも、創作活動で成功を収めている人が「創作こそ人間が創意工夫の中で唯一生きた証」みたいなふうに言われても、反発する人が多いのではないでしょうか。

 

で、だからこその物語のような気がしています。

 

物語の中に、そういったものがあれば、うまく言えないですが中和される価値観がある。

 

それは『騎士団長殺し』に限っていえば、村上春樹の本音なのかどうかすらわからないわけですよね。あくまでも物語のパーツとしてあるだけで、それを生む出す作家の本心とは関係ない。でも、あれこれ推測することはできる。僕がさっき推測したように。

 

ただ真実はやっぱり断定にはないとはわかっています。

 

創作マンにだって、そういう部分もあれば、そうではない部分もある。

 

そういう時期もあれば、そうではない時期もある。

 

それがわかった上で読んでいるので、タイトルにあげたセリフはますます印象的なんです。

 

村上龍が、端的に村上春樹の作品が売れる理由をこう表現しています。

 

「読者の最大公約数みたいな文章と物語であるから」

 

これは実に的を射ていると思います。

 

最大公約数的な文章と物語を書くのは難しい。実際、村上春樹以外の日本人にはそれができていないわけですから。

 

村上龍は「絶対にみんながいいと思ってほしい小説をおれは書いている」

 

と言って、

 

村上春樹は「10人いたとしたらそのうちの何人かが気に入ってくれる小説を書ければ自分はいい」みたいなことを、どこかの対談かエッセイで言っていました。

 

余談ですが。

 

村上春樹は、確かに「小説」という形でしか伝わらない仕事をしている。

小説なんてなくてもいいという発想も確かにあるけれど、小説でしか表現できないものもある。

それはきっと歴史とか文明が証明している。だって一向に小説自体がなくなるってことはないし、まったく小説を読まないっていう人もごく一部な気がします。

 

今夜も続きを読みますが、せっかくなので、村上龍などの作家が絶対にこういう比喩は使わないなあという文章を発見したのでここに記しておきます(笑)

 

それは、「読書家が本の中で気に入った文章に線を引くように」です。

 

あるいは僕がそんなことは滅多にしないだけで、年季の入った自他共に認める読書家はみんなそうしているのかもしれないのですが。でもそうじゃない読書家の価値感も村上龍なら認めるはずです。たとえば、金がなくて、でも『騎士団長殺し』は読みたくて買ったけど、すぐに読み終わったら古本屋にいい値で売りたいから汚して読みたくないんだ。みたいな奴の発想です(笑)。